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一度踏み入ったら出口の全く見えない音楽の深い森。森の中を彷徨い歩く内に出会った神々と妖精たちのお話です。

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ブルレスク
Burlesque1


いきなり本ブログらしからぬドキッとするような画像からスタートです。「ブルレスク」と言えば、クラシック音楽ではおどけたユーモアと辛辣さを兼ね備えた軽妙な音楽形式の楽種のこと。マーラーの交響曲第9番 第3楽章ロンド=ブルレスクが直ちに頭に浮かびます。でも本日はその曲ではなく、ただ今、話題の映画Steven Antin監督の「Burlesque」(2010年作)を取り上げます。管理人は今年の1月頃でしたか、機内でこの映画を初めて観て、そのエネルギッシュな振り付けと登場人物の歌のうまさに度肝を抜かれました。


物語は比較的単純で、一言で言ってしまえば、アイオワの片田舎でくすぶっている生活に飽き足らず、片道バスのチケットと身体一つで大都会に飛び出して来た小娘が、ふと足を止めたロサンゼルスのとあるナイトクラブの華やかな舞台に魅せられて、やがてその劇場のスターダムにのし上がるまでのアメリカン・ドリームを描いた作品。


主人公の娘を演ずるChristina Aguileraによる卓越な歌と踊りが素晴らしい。もちろんそこが本映画最大の魅力の一つなのですが、ここではとりわけ助演女優(主演の1人と言ってもよい)を務めたCherの存在感がたまりません。Cherが演ずるのはクラブ「Burlesque」のオーナー。客はそこそこに入るものの、資金ぐりに苦しむ彼女に付け入るその辺り一帯ではやり手の興行主に、危うく店の経営権を奪い取られてしまいそうになります。追いつめられた彼女がいよいよ店を手放さなければならないと覚悟して、暗いステージの上で絶唱する「You Haven't Seen the Last of Me」が絶品です。それまでは幾分か気味が悪いくらいにケバい化粧が目立つCherが、このシーンで突然彼女の持つ底知れぬ実力を遺憾なく発揮します。初めて観た時には正直鳥肌が立ちました。





歌詞

Feeling broken, Barely holding on
But there's just something so strong
Somewhere inside me
And I am down but I'll get up again
Dont't count me out just yet

I've been brought down to my knees
And I've been pushed way past the point of breaking
But I can take it I'll be back
Back on my feet
This is far from over
You haven't seen the last of me
You haven't seen the last of me

They can say that
I won't stay around
But I'm gonna stand my ground
You're not gonna stop me
You don't know who I am
Don't count me out so fast

I've been brought down to me knees
And I've been pushed way past the point of breaking
But I can take it I'll be back
Back on my feet
This is far from over
You haven't seen the last of me

There will be no fade out
This is not the end
I'm down now
But I'll be standing tall again
Times are hard but
I was built tough
I'm gonna show you all what I'm made of


I've been brought down to me knees
And I've been pushed way past the point of breaking
But I can take it I'll be back
Back on my feet
This is far from over
I am far from over
You haven't seen the last of me

No no
I'm not going nowhere
I'm staying right here
Oh no
You won't see me begging
I'm not taking my bow
Can't stop me

It's not the end
You haven't seen the last of me
Oh no
You haven't seen the last of me
You haven't seen the last of me


「わたしは こんなことではへこたれないわ」
「へこんでいるのは今だけ でもこれが最後じゃないわ」
「きっと きっと わたしの足で立ち上がってみせる」


映画では、やがて若いChristinaがショーの主役として次々と新趣向の踊りを披露してくれることにより、客の反応が一変。店の権利を譲らなくてもよくなる程に活況を呈し始めるところでエンディングを迎えます。小さな舞台ながら、まるでラスベガスで豪華なショーを観ているみたいに楽しめるところがもう一つの見所です。






マーラー以外にブルレスクと題した作品を書いたのは、古くはR. シュトラウスとマックス・レーガー (Johann Baptist Joseph Maximilian Reger, 1873-1916) 。比較的新しいところでは伊福部昭先生も書いています。今日の音楽、そのレーガーが唯一残したピアノ協奏曲Op. 114とR. シュトラウスのブルレスク(ピアノと管弦楽のための)をカップルさせたhyperionのromantic piano concertoシリーズから新シリーズの1枚をお薦めと致しましょう。

レーガーはドイツの作曲家。ベートーヴェン、ブラームスの系譜を継いで、交響曲と歌劇こそ書き残さなかったものの、その他ほとんどすべてのジャンルに多数の作品を残しました。本来なら正統的なドイツ・ロマン派音楽の継承者として自他共に認める存在であった筈にも拘らず、現代ではオルガン曲や幾つかの変奏曲を除いて、かなり一般の音楽ファンから遠い存在になりかけています。

これにはレーガー自身の気難しい性格と相俟って、作曲年代によって様々に作風を変化させたため、いまいち彼固有の作風というものが捉えどころが無かったということも、高い評価を固定化させることが出来なかった理由だとも言われています。しかしながら、このCDを始めとして、レーガーの作品が最近徐々に音源として出回るようになり、彼の再評価が始まろうとしています。他人の評判ではなく、読者の皆様御自身の耳でそうした歴史的作品の発掘に立ち会い、さらには再評価の最前線に出てみられるのは如何でしょうか。「ブルレスク」という楽種に一端でも手を染めた作曲者の隠された意地に触れてみるのも一興かと。


Burlesque2
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被災地より
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去る5月の連休前後に仕事の関係で東北地方を訪れる機会がありました。本日は3月11日に発生した東北太平洋沖を震源とする大地震による津波の被災地の様子をお伝えしたいと思います。既に皆様におかれましては、新聞やテレビのニュース映像により津波被害の甚大さはよくご存知のことでしょうけれど、管理人は実際に目の当たりにして言葉を失いました。常識ではあり得ない状況がそこには存在していたのですから。


冒頭の写真は岩手県釜石港で撮ったもので、貨物船は何と陸の上に乗り上げて、あわや民家に迫ろうとしています。


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先の船を後方より撮った写真がこれで、ご覧のように岸壁の上に完全に打ち上がっています。海面が上昇した時にここまで移動し、後で水が引いたためにこのような状態で止まってしまったわけです。丁度この貨物船が海面の上下降に際して激しい流れに押されながら、港内をあちこち漂流している凄まじい映像がyouTubeにアップされています。





津波というものは、大波のように数回だけ押し寄せるものだとばかり思っていましたら、確かにそれもあるけれど、むしろ海面全体がかなりの長時間上昇し、波よりもそのことによって膨大な量の海水が軽々と堤防等を乗り越えて街中にどっと流れ込んだことがよく分ります。これは他の地域で記録された様々な映像でもはっきりしており、いずれの地域であれ、あっと言う間に猛烈な水のエネルギーで根こそぎにそこにあるものを押し流したことが建物の被害状況からも明らかです。


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港からやや離れた釜石市内中心部の商店街にある建物群は、すべて1階部分が流れ込んだ海水によって完全に押し流され壊滅状態。この地区では実際には2階部分まで水に浸かっています。海岸に近い地域ではさらに上の階の高さまで水が押し寄せたであろうことが容易に想像できます。




もう一つの被災地、宮城県石巻市における被害状況の写真も何枚か。


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海岸に近い工業地帯。見渡す限りゴーストタウンと化し、辺り一面に残るヘドロの悪臭が酷かったです。


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お墓の上に何と車が! 


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学校のプールで泳ぐのは車! これらの光景を初めて見た人にはミステリーとしか映りません。


東北地方太平洋沿岸のほとんどの町々がこのような被害に遭われたわけですから、その損害の総額たるや想像を絶します。



「あんたんとこさ(地震の影響は)どうだったん?」

「お蔭さんでみーんな助かって大丈夫だったよぉ。家は跡形もなく、みーんな持ってかれちまったけどなぁ。」

「・・・・・」


こんな地元同士の人たちの会話をあちらこちらで聞きました。家財だけならまだしも、愛するご家族を亡くされた方々には掛けるべき言葉も見つかりません。






本日の音楽、5月27日は日本の暦では仏滅に当たります。黛敏郎(1929-1997)氏の涅槃交響曲を取り上げることに致しましょう。しかし、本当の関連性は本日記事中の写真にありますことは、賢明な読者の方々ならすぐにお分かりになることでしょう。


涅槃(ねはん)交響曲は1958年の作品。黛氏は、フランス留学から帰国直後、西洋前衛音楽の紹介に熱心だった時期もありましたが、早坂文雄(1914-1955)氏の遺作、交響的組曲「ユーカラ」を聴いて衝撃を受け、本作品制作へのインスピレーションを受けたと言われています。西洋の模倣から日本独自の音楽の創造へ向けて、実質的に第一歩を踏み出した転換期の作品と言えるでしょう。奈良大乗仏教の声明(注. 僧侶が仏典に節をつけて読み上げるもので「しょうみょう」と呼び、天台声明、真言声明などが有名。本作品ではよりプリミティブな声明のエッセンスを現代にまで伝え残している奈良の薬師声明を採用している)を男性合唱として取り入れたことが新規な試みであり、また鐘の音など東洋的音色をオーケストラで如何に表現したらよいかに特に傾注したそうです。釈迦の入滅を嘆き悲しむだけではなく、如何にその後の新たなる世界の到来を迎えるべきかに作曲者の関心は寄せられています。その意欲と新世界の予感を暗示させる終曲までの30数分間は、尊い命を奪われた者たちへのレクイエム(鎮魂曲)であると同時に、生き残った者たちに向けて送り続けられる限りないエールであるようにも思われます。


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ブラックアウト
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日本への一時帰国、そして被災地訪問など超多忙のため、ブログが放置状態となってしまいました。皆様、ご無沙汰して申し訳ありませんでした。




いつも当たり前にあるべきものが急に手にはいらないと分った時、人はそのありがたみを初めて実感することができます。電気、水、食料、燃料、そして安全...。




このブログの読者の皆様ならよく御存知のように、管理人はいろいろな国や地域に出掛けます。行く先は欧米のように生活水準の極めて高い国のこともあれば、とても貧しい発展途上国のこともありで、実に様々です。中には基本的インフラすら全然整っていない劣悪な環境の中へ飛び込まねばならない時もあり、そもそも国として成立していないのではと首を傾げざるを得ないところさえあります。


少し以前に訪問したある国では、停電が日常茶飯事でした。実際に管理人の滞在中も毎日のように停電が発生し、いよいよその国を離れるために空港に向かっている途中にも、街中は突然真っ暗になりました。
「停電」英語で言うところの「Blackout」です。さてどうなることやらと、恐る恐る空港ビルに近づいてみましたが、案の定建物を外から見る限りほとんど灯りが点いていません。予定通りには飛行機が飛ばないことを半ば覚悟して、薄暗い小さな空港ビルの中に足を踏み入れると、何と所々だけ蛍光灯が点いていました。非常用電源をonにして、必要最小限の電気でチェックイン作業をしているのです。初めは驚いてしまいましたが、気を取り直して列に並ぶことに。結局その後しばらくして復帰したのでしょう。予定の出発時刻からさほど遅れることもなく無事離陸することが出来ました。やれやれです。


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皆様、この写真の右に見えるもの(灯り)は何だかお分かりになりますか。これは現地ではケロシン・ランプと呼ばれたりしています。ケロシンとは灯油のこと。つまり灯油ランプです。地方に行けば、電気がないのが当たり前という地域は世界中に未だ未だ無数とあります。また、電線はあっても配電は夕方からせいぜい夜の10時くらいまでの数時間だけというところも多いです。こんな地域に出掛ける時は、懐中電灯やマッチ、そして携帯電話は必需品となります。

懐中電灯やマッチは分るけれど、何で携帯電話かって疑問に思われる方がいらっしゃるのでは?

もちろん、通信のためというのが第一の使用目的です。山岳地帯や人里離れた原野は別として、電話回線網が敷かれていない国や地域であっても、今や携帯電話が通じない町や村はほとんどないというのが途上国の現実です。それほどに携帯電話の普及は凄まじいです。しかし通信目的以外に、次のような時に大変役に立ったと、仕事仲間から聞きました。その方のお話を、ちょっと再現。本来ならその国で一番しっかりした設備を誇るはずの大学病院で、ほんの数ヶ月前に起きた実話です。



時間は夜の9時過ぎ。一人の妊婦さんが急に産気づいて病院の分娩室に運ばれました。医師が診察したところ、患者さんは初産で、しかも胎児の位置関係から通常分娩は困難であろうと直ちに判断。すぐに帝王切開の方針が傍らのご主人(この方も医師で、自分の奥さんのお産に立ち会うべく、分娩室に一緒に入室していた)に告げられました。

この時点で、一応電気は病院内全体に行き渡っており、いざと成れば手術室には1分以内に非常用電源が作動するはずでした...

夜10時過ぎには準備も整い、早速手術開始。ところが、丁度執刀医がメスを取り上げ開腹が進んだ午後11時頃、突然のブラックアウト!

すぐにも非常用電源に切り替わり、明りは戻るはず...

・・・・・

ところが待てど暮らせど、電灯は点かず。とっさに執刀医がご主人に向かって叫んだ言葉が

「君の携帯電話をOnにして述部を照らしてくれッ!」



ご主人も医師。多少の修羅場には慣れているとは言いながら、さすがにこの時ばかりはご自分の奥さんの出産ですから、

「家内は大丈夫なのか? 子供は一体どうなるのだ?」

と初めはすっかり気が動転してしまったそうです。が、やがて気を取り直して、手が震えながらも携帯電話の表示画面から発する微かな灯りを述部に向けてかざし続けたとのこと。


結局、非常用電源が作動して手術室に明りが灯ったのは停電が始まってから45分後。何か機械かシステムに不具合があったらしいです。


帝王切開で生まれた赤ちゃんは元気な女の子。幸い母体も問題なく順調に回復中だそうです。


「今だからこんな風に笑話のように話せるけどね、あの時ばかりは本当にうろたえたよ。」
と、その旦那さんがしんみりと私に語ってくれたのは、その出来事の2週間後のことでした。





この国を一般の旅行者が訪れるのはまことに難しいです。たとえば首都にある国際空港に着いてもイミグレーションの係官は現地の公用語だけで英語をほとんど理解することが出来ません。

仮に無事にイミグレーションを通過したとしても、空港から街の中心部まで電車やバスなどの公共交通機関が走っていません。そしてタクシーも空港の敷地内には入って来れません。

空港の外に出ればタクシーらしきものは走っているけれど、うかつに乗ろうものなら、どこに連れて行かれるやら保証はありません。運が悪ければ、金品を巻き上げられるかも。

空港の中には外貨を換金出来るところがありません。街中に確かに銀行は幾つかありますが、誰も信用していないので実際にはほとんど使われていません。

現地の通貨はあるけれど、日用品の買い物に使われる程度で、ある程度の額になると、すべて外貨で直に取引されたり支払いがなされています。

首都であっても市内のおよそ半分の地域では、停電が頻発してまともに配電されないか、そもそも電気が来ていません。だから人々は皆ケロシン・ランプの灯りの下で暮らしています。(顔が下からの光に照らされるため、夜に訪れるとかなり異様な雰囲気です。)

水道も同様で、どの家々の蛇口をひねっても水が出て来ることは滅多にありません。(私の知り合いは、我が家は水は1年間、電気も1ヶ月以上来ていないよとマジな顔で言いました。)

この国の飛行機は皆とても古く、しかも整備が悪いため、頻繁に墜落しています。そのためにこの国の飛行機が隣国を含めて他の国へ飛ぶことはIATAから許可されていません。あまりに事故が多いためか、日本の保険会社の大半はこの国への渡航を保険の対象外としています。(実際、この国では飛行機が無事に着陸すると、乗客から自然と拍手が起こるのが習わしになっています。)

警察官であれ兵士であれ、およそ制服を来た人間には何があっても近づくなと言われています。(本物かどうか分らないし、たとえ本物だとしても信用できないから。)

この国の全域とは言いませんが、戦争や内乱の影響が色濃く残っており、非人道的な行為・事件が日常のように発生しています。



数え上げれば切りがありませんが、およそ常識というものが通用しない国・地域が世界には現実に存在しているのです。そんな大変危険な地域でも、人が生活している限り、新しい命が宿り、生まれて来ます。大変な時代だけれど、ようこそ無事に生まれてくれました。心から「ウェルカム!」と言いたいです。





中島みゆきさんの「誕生」 (この歌を被災地の方々を始め今を憂える多くの人々にお届けしたいと思います。)



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