一度踏み入ったら出口の全く見えない音楽の深い森。森の中を彷徨い歩く内に出会った神々と妖精たちのお話です。

ハタリに満ちた町
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自然の持つ力は時に人智を超えることがあることを人類は十分に知っている筈なのに、ともするとその危険性についていとも簡単に忘れてしまうらしい。


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活火山のすぐ麓にありながら、その町は日に日に成長しています。噴火で降り注いだ火山岩や火山灰で町のかなりの部分が被害を受け、道路は未だに舗装もなくデコボコ・ガタゴトであるにも拘わらず、人々は黙々と生命の営みを続けています。


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街の広場に作られた人力バイクの像。噴火の被害もさることながら、長年続いた戦乱や紛争のために十分な自動車もガソリンも無い中で、人々が物資を運搬するために産み出した手製の人力運搬装置です。材料はありあわせの木材と古タイヤなど。車輪部分は木の幹の輪切りに古タイヤを削いだものを打ちつけて造られています。坂道は重力で転がり、登り坂や平らな道(ほとんどないが)はひたすら人の力で押して動かします。モノが無いならそこに有るモノで作れば良いという、いわば究極の復興のシンボルなのかも知れません。最近でこそ、自動車やバイクを見かけるようになりましたが、数年前まではほとんどこれで輸送が行われたそうです。今でも現役で使われており、実際町の至る所で見かけました。ちなみにこの像で人が運んでいるのは地球です。何と素晴らしい気概ではありませんか。








この町に滞在する間、お仕事の関係で知ることになったとある方から、夕食をぜひ我が家でとご招待がありまして、ある晩その家にお呼ばれすることになりました。


薄暮の中、悪路の道をゴトゴトとオンボロ四駆が走りました。いや、走っていると言うよりは歩くスピードと変わらなかったかも。何せ道が本当に悪かったですから。やがて前方に見えて来たのは国連軍の駐屯基地。A国、B国、C国の陣営が続けて並んでいます。(注. 国連の平和部隊は通常いろいろな国から派遣されますが、キャンプは国別に設営され、決して一緒に陣を構える訳ではありません。)ご招待を受けた時は、まさかお家がこちらの方角とは知りませんでしたので、基地を見た瞬間は大変緊張しました。が、今更引き返したいとは言えず、この時の心境は「毒食えば皿まで」といった感じでした(ちょっと違うか?)。幸いその時間は未だポツポツと人通りもあり、基地のゲート前では特に呼び止められることもなく無事その前を通過しました。


さて、ご招待されたお家に着いたものの、家の中にも周りにも灯りはなく真っ暗です。どうやらその周辺一帯が停電中の様子。案内されて家の中に入ると家人が懐中電灯を点けてくれました。結局その晩は、懐中電灯の光の中でのお食事と相成りました。この国で停電は特別なことでもなく、ごくごく日常の出来事です。出された食事のメニュもその国ではごく普通のもの。暗い中でのお食事でしたが、大変美味しく頂くことが出来ました。


一通りの食事を済ませた後は、これからどうやってこの町を復興したら良いかという話が続きました。心ある者は常に前向きであることに感心敬服するばかりです。しばらく話に花を咲かせた後、お礼を述べてその家を辞す時間になりました。しかし、外は相変わらずの真っ暗闇です。もっとも仮に電気が戻っていたとしても、街灯などはほとんどありませんから同じだったでしょうが...。


さて帰り道、再び四駆に乗りまして、いよいよ基地の前に差し掛かりました。もはやこの時間では歩く人影もなく、真っ暗闇の中、ヘッドライトの光の輪に見えたものは、土嚢を積んだ見張り台の上で機関銃を構えて警戒に当たる兵士の姿でした...。(このまま車を進めても)大丈夫?と尋ねる管理人の問いに答える声もなく、運転手はただ黙って、ノロノロと運転を続けます。来る時とは比べものにならない緊張が走ります。


一つ、また一つ、と基地の前を通り過ぎました。前後の人通りはすっかり途絶えており、3つ目の基地ゲートを過ぎた時に一台の国連ジープがすれ違っただけでした。時間にすれば多分ほんの15分くらいだったのでしょうが、全く命が縮まる思いがするとはこういう時を指すのでしょう。幸いに何のトラブルもなく、無事に宿に戻ることが出来ましたが、今思えば相当危ない橋を渡ったものだとつくづく思います。


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静かで暗い夜が明けて、未だ朝の7時台というのに頭のすぐ真上から飛行機が飛び立つ音が聞こえました。その後、飛行機の発着は夕方までひっきりなしに続きました。実はその空港へ飛ぶ正規の定期便は首都から日に1本があるだけで、他の空港からのものを加えても日に数便程度しかありません。見上げると、飛び立っているのは大半が国連機か国軍機、あるいは赤十字の救援機などで、この土地が未だに紛争の中心地にあって特別な場所であることが一目瞭然です。しかし、驚くべきことは、それら得体が知れる飛行機はまだしも、機体に何も画かれていず、国籍も会社名も不明な怪しい小型あるいは中型の飛行機が頻繁に飛び交っていることです。おそらくは○○○○や○○○○○など希少物資の積み出しが目的と推定され、こうした飛行機は何処からともなく飛来し、また何処に向かって飛んで行くのかも一切分かりません。それでも、この怪しい物資の持ち出しこそがこの町の活況を裏で支えていることは間違いありません。そして皮肉なことに、それがある限り、この町に真の平和が訪れることはなく、これからも変わらず軍事的要衝の地であり続けるのでしょう。町の復興が進むと同時に、空に行き交う多数の軍関係や正体不明の飛行機たち。同じ被災地でありながら、自衛隊による復興作業が行われていた東北地方の海岸線の町とは何と異なる風景なのでしょうか。複雑な気持ちが管理人の心の中で激しく交錯します。




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