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一度踏み入ったら出口の全く見えない音楽の深い森。森の中を彷徨い歩く内に出会った神々と妖精たちのお話です。

ハーグの憂鬱
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フランスの画家、ウジェーヌ・ブーダン(Eugène-Louis Boudin, 1824-1898)作
「アントワープの嵐」


只今、オランダのハーグで行われている核安全保障サミット。25日の午後に予定されている日米韓3国首脳会談。クリミア半島のロシア領土への併合問題が膠着状態を迎える中、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核開発抑止、韓国慰安婦問題など、様々な重要案件を抱えて、どうなることやら。マレーシアの航空機墜落?のニュースも不明なことだらけで、何やら暗雲が漂う世界情勢です。


春は芽吹きの時。新しい世界への期待に満ちた喜びの季節であると同時に、突然のように季節外れの大雪や強風が吹き荒れるなど試練の一面もあります。





オランダの知られざる作曲家シリーズ(いつの間にシリーズ化したのか?)、本日はユトレヒト生まれの作曲家・オルガン演奏家ワーへナール (Johan Wagenaar, 1862-1941)をご紹介しましょうか。


Wagenaarは貴族の父親Cypriaan Gerard Berger van Hengstとメイドであった母の間に生まれました。当時の慣習では、社会的階層が異なる間での結婚は許されず(英国恋物語『エマ』を想い出してみて下さい)、結局Johanは母親の姓を名乗ることになります。しかし、幼い頃から音楽的才能は目覚ましく、オランダの作曲家としては例外的に名が知られているRichart Holなどに師事しながら、やがてユトレヒトやハーグなどを活躍の舞台として音楽教師、オルガン奏者、また作曲家として徐々にオランダ音楽界の重鎮と成って行きます。風貌も何処か貴族的な佇まいがありますよね。


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Wagenaarの作風は、率直に言って名だたる後期ロマン派の作曲家たちに対抗できるほどの強烈な個性に恵まれているとは言い難いかも知れませんが、中には非常に印象に残る作品も残しています。たとえば、次の動画は20世紀初頭のアントワープの街の様子を撮影した貴重なものですが、その背景に流れる音楽がJohan Wagenaarの手による‘Larghetto for oboe and chamber orchestra’Op.40という作品です。憂鬱が杞憂に終われば良いのですが...。






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オランダの春
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ヨーロッパは日によって凍えそうなほど寒い日があるかと思えば、ポカポカとした陽気の日もあり、確実に季節が巡っていることだけは確かのようです。


日本から最初に足を下ろすヨーロッパの玄関口の街。人によって様々でしょうけれど、大概はパリ、ロンドン、ローマ、アムステルダムのどれかではないでしょうか。今日は、これらの中では少々マイナーなオランダのアムステルダムの話題から。理由はいとも単純。管理人はパリの街については何度もご紹介しましたが、もう一つ馴染みの深いこの街についてはあまり取り上げたことが無かったからです。


団体の観光でいらっしゃる場合には、オランダのスキポール空港から貸切バスなどでホテルに直行してしまうことが多いことでしょう。ですから、空港からアムステルダムの市街中心地までどうやって行くか、皆様は案外ご存知ないかも。実は意外と簡単で、空港のパスポート・コントロールを通過して、荷物を引き取り、税関を通り抜けたら、そこは広いショッピング・エリアになっており、その直ぐ下の地下から鉄道が出ているのです。先ずはそのエリア内に切符売り場がありますから、そこでアムステルダム中央駅までの切符を買って下さい。片道切符1枚が4.5ユーロ(2ndクラス)です。切符を買ってからトラック番号の表示に従いエスカレーターで(または階段で)地下に降りると、そこはもう駅のプラットホーム。どのトラック番号からアムステルダム行きが出るかは、切符を買う時に教えてくれます。時間帯にも拠りますが、ほとんど10~20分おきに列車が出ています。特に改札の機械とかに切符を通す必要はありません。約15分程度乗車した3ツ目の駅がアムステルダム中央駅 Amsterdam Centraal(冒頭の写真)です。その手前の駅もAmsterdam何とか...という駅名なので、降車の際にお間違いなく。終点がアムステルダム中央駅ならよいのですが、InterCityの場合、うっかり乗り過ごすとどこか遠くの街に連れて行かれてしまいますからね。不安になったら、お客さんに訊いて確認しましょう。オランダでは英語がよく通じます。


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さあ、着きましたアムステルダム中央駅! 新装完了した東京駅も立派ですが、こちらもなかなかです。これから皆様はどちらに向かわれますか? オランダ名物運河をボートに乗って市内一巡? それとも同じくオランダ名物、広大なチューリップ畑や巨大な風車見学は如何でしょうか? 
それからオランダは有名な画家にも事欠きません。レンブラントやゴッホ、更にはフェルメールらの絵画を目当てに美術館巡りもいいですねぇ。駅前に観光案内所がありますから、そこで市内地図と観光ガイドのパンフレットなどをもらうことが出来ます。「飾り窓」を覗いてみたいなんていう不謹慎な殿方もいらっしゃるかも。けれども、それは適当にスルーしちゃいましょう(笑)。


と、まあ、とにかく観光資源は実に豊富ですから、メジャーな街の観光巡りを制覇された方は、是非このアムステルダムにもお出で下さいませ~。





さて、錚々たる画家たちの名前を挙げられるオランダですが、では音楽の分野ではどうでしょうか。勿論言わずと知れたアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団はこの街を本拠としています。でも作曲家の名を挙げろと言われたら?
これ、以前一度話題にしたことがあります(2007年9月24日の記事)が、意外と難しいのです。


今日は、そんな知られざるオランダ作曲家の中から、ロマン派時代の真っ盛りに活躍したJohanness Verhulst (1816-1891)をご紹介します。
Verhulstはオランダのハーグの生まれ、メンデルスゾーンに若干遅れ、シューマンの全盛期とほぼ活躍の時代が重なっています。作風もこの両者をミックスしたような感じです。彼がお年を召してからの風貌は、下のスケッチ画のように少々いかめしい感じがありますが、若い時の作風はかっちりとした様式の中に明るさが弾き出るような軽快さが特徴であり、メンデルスゾーンが休暇でハーグ近郊のリゾート地Scheveningenの町を訪れた1838年に彼の作品を見て才能を読み取り、自分の弟子にと誘っています。


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ライプツィヒ滞在中の1841年に作曲された彼の唯一の交響曲 Symphony in E-minor, Op.46 は、丁度シューマンの交響曲第1番「春」のような、明るい、新鮮な時代の芽吹きを感じさせる佳品です。






上記の音源はラジオ放送からだそうで、Chandosから出ているこのCD(↓)がお薦めです。


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春の和菓子
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春ですね~。桜柄をあしらった頂き物のお菓子が心に沁みて嬉しいです。


お着物の柄と同じく、お菓子、特に和菓子は定番ものは別として、少し季節を先取りしたデザインのものがよしとされます。先ずは視覚で楽しみ、そして舌で味わう。日本文化の素晴らしさの一つです。


もう少ししたら、ちょっと長めの休暇を頂けるようです。もう身体がへとへとに疲れていますから、久し振りに日本でゆっくりしようかな~。
しかし一方、花粉症やら、中国から飛来するPM2.5やら...今の日本には心配なことがたくさんあります。着いたらたちまち鼻水が止まらない...なんて、嫌ですものね。


ちょっと身体を慣らす意味で、今日はこんな音楽を。イギリスの作曲家ホルスト(Gustav Holst, 1974-1934)がかの有名な「惑星」を作曲中に、日本人舞踏家伊藤道郎氏の依頼によって作曲したバレエ音楽「日本組曲 Japanese Suite」Op.33 (1915年作)です。メロディーは伊藤氏が口述したものをホルストが採譜し、それに基づいて6楽章からなる本作品を書き上げました。バレエの初演は、翌年伊藤氏自身によってロンドンにて。


100年前の日本。当時は現代のような汚染物質もなくて、とても美しい日本があったことでしょう。日本を題材にした西洋音楽ものは、どこかに中国のそれとの混同があって、日本人としては失笑せざるを得ないことがあるものですが、本曲は案外すんなりと聴くことができます。第5曲目「桜の木の下の踊り」で子守唄を使っているところに、当時のイギリス人としては特に異国情緒を感じたのではないでしょうか。








プライム
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慌ただしく日々の仕事に追われる内に、いつの間にか東日本大震災3周年の311も過ぎてしまいました。改めてあの未曾有の災害で命を落とされた多数の方々のご冥福をお祈りすると共に、被害に遭われて今なお仮設住宅や避難先で不自由な生活を強いられている方々に励ましの言葉を掛けたくも、その適切な言葉が見つかりません。


以前にもどこかで書きましたが、311と911、この2つの数字は奇しくも半年をインターバルとして強烈に記憶に残る日となってしまったわけです。どちらの数字も素数です。では更に3ヶ月ずつずれた611と1211も素数かと言えば、13✕47=611、7✕173=1211で、素数ではありません。それだけ311と911は特別な数字ということであり、これが単なる偶然であるのか、あるいは何か特別な神の啓示でもあるのか、いずれにせよ深く考えさせられてしまう事実です。


素数のことを英語で何と言うのかとちょっと調べてみましたら、「prime number」と呼ぶのだそうです。primeが付く単語と言えば、誰でもご存知の「prime minister(首相)」、あるいは金融関係だと「prime rate」など。音楽関係なら、これに関連した言葉は、勿論「prima donna」。要するに「主要な」「第一の」...というように、最も重要な事柄を表わすのに「prime」という言葉は使われているのですね。


素数に関して他に管理人が多少とも知っていることと言えば、ネット社会において極めて重要な銀行口座等の暗証番号など、最重要な暗号情報がこの素数の掛け合わせになって鍵となっているとのこと。素数は無限にあり、それらの任意の組み合わせから作成される暗号は、たとえ何台ものコンピューターを駆使しても一定時間内にはすべての組み合わせを試すことが不可能なくらい難しいことから、機密性を保持できるのだとか。もっとも管理人はその分野の専門家ではありませんので、もしかすると見当違いなことを言っているのかも知れません。


これまでに発見・確認されている最大の素数は、「2の57,885,161乗-1」という数だそうで、桁数にすれば1,700万桁にも上る巨大な数なんだとか!ちょっと想像も出来ないです。また、この2の何々乗マイナス1という形に表せる素数を、メルセンヌ素数と呼ぶのだそうです。確かに3や7や31など、小さな素数なら直ぐにその形に表すことができますね。そして上記の数は、48番目のメルセンヌ素数になるのだとか。たった48番目と聞くと、私たちの銀行口座の暗証番号も多数のコンピューターの手によれば、いつかは皆見破られてしまうのではと不安になりますが、素数はそれ以外にも無数にあるので実際は大丈夫なのでしょう。(それにしてもビットコインの盗まれたお金は、一体誰によって何処に消えてしまったのでしょうか?)


話が変な方向に流れてしまいましたが、「プライム」であることが如何に大変で尋常ならざることなのかを震災を契機に改めて知ったということを言いたかったのです。







凡である管理人などは、日々の仕事に疲れた身体をベッドに横たえて僅かな眠りに就く時に、CD(or MP3)プレーヤーのスイッチを押して流れる美しい音楽によって、辛うじて明日への活力を取り戻しているような状態です。旅先にいつも携行する音楽が幾つかありますが、その中の一つを本日はご紹介致しましょう。震災で重荷を背負われている方々にとって、このような音楽が力になれるかどうか全くもって自信がありませんが、それでも美しい音楽は少なくとも私個人にとって大きな力になっています。Ennio Morriconeの作品から「The Mission」のメイン・テーマです。管理人もある意味で一つのミッションを抱えている身ですから、この音楽には心底inspireされます。






ミーシャの涙
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あああ、ついに終わってしまいましたねぇ~~~、ソチ・冬のオリンピック。。。


日本の方にお願いして開会式と閉会式を録画してDVDに焼いてもらいました。ただ今、それらをじっくりと鑑賞中です。

なにせ、管理人の滞在先では今回のオリンピックに関してまるでTV放映がありませんでしたから、全くと言ってよいほどオリンピックの番組を見ることが出来ませんでした。そして先週後半、運良く出張先の国でTV放映がありましたから一部の競技と閉会式だけはリアルタイムで見ることが出来たのです...。)


リアルタイムで見たこともあり、閉会式のラストシーンには本当に感動しました。クライマックスの聖火が吹き消されるところです。正直、涙が止まりませんでした。


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この後、マスコットキャラクターのホッキョクグマの目から涙がホロリとこぼれ落ちたところ、ご覧になりましたか?


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遡ること34年前、冷戦時代にモスクワ・オリンピックがソビエト連邦のアフガニスタン侵攻に抗議して米国や日本を始めとする西側諸国のボイコットによって参加国数激減の中で開催され、その閉会式の終わりに「気をつけてお帰りなさい」とのメッセージと共に、背景の人文字の中でマスコットのミーシャが流した涙。その涙は、本来自由で独立であるべきスポーツの祭典が政治の世界に翻弄されたことを悲しむ涙でもありました。


http://www.youtube.com/watch?v=owhEVfh4DMw


しかし、今回のマスコット、ホッキョクグマの涙は、その時を回想しつつも、無事にオリンピックを終えることが出来た安堵と一抹の寂しさの表出であると同時に、それを可能としてくれた世界の人々に向けた感謝の表れであったのではないでしょうか。即ち今やロシアとそれを取り巻く世界状況は当時の社会情勢とは大きく様変わりしたとの強いメッセージであるように思えたのです。ロシアの軍事介入が取り沙汰されているウクライナ情勢が緊迫する中、この閉会式のメッセージが単なる建て前ではなく真に世界平和への道へと繋がって行くことを心から願っています。


最後に、閉会式を見逃した方、もう一度その感動を味わいたい方のために、静かで情感豊かな音楽と共に聖火を吹き消すシーンを含む感動のクライマックスから終結の花火までを、音楽に集中できるよう解説抜きのヴァージョンでお届けしたいと存じます。(画面に現れる幾つかのフレームは邪魔なので、各フレーム右上のx印をクリックして消してご鑑賞下さい。)





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[追記]

なお上記閉会式で流れている音楽は、始めが1974年のソ連の映画「At home among strangers」のために書かれたテーマ音楽で、ロシア・ノボシビルスク生まれの作曲家Eduald Nikolayebitch Artemyev (1937-) による作品です。そしてスクリーンの回想シーンとしてミーシャが空に舞い上がるところの短い音楽は、同じくロシアのポピュラー音楽作曲家として有名なAleksandra Nikolayevna Pakhmutova (1929-) によるもので、1980年モスクワ五輪の閉会式のテーマ音楽「Goodbye, Moscow!」。その後に沢山の子供たちが現れて、会場一杯の黄色いミモザの花の下にソプラノ歌手 Khibla Gerzmava と共に歌うシーンのところは、ウクライナ生まれの作曲家Igor Yakovlevich Krutoy (1954-) とサハリン生まれの作詞・作曲家Igor Yuryevich Nikolayev (1960-)合作による「Goodbye, Sochi!」となります。最後は言わずもがな、チャイコフスキーPコンNo.1。





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