サイクロン
- 2008/05/08(Thu) -
Nargis2



「とぐろを巻いて気絶する (Fainting in Coils)」なんて書いたからでしょうか。ヘビがとぐろを巻くという言葉を語源とするサイクロンが、とてつもない破壊力を持っていることをマザマザと見せつけられました。

今月2日から3日にかけてミャンマーを襲ったサイクロン・ナルギスの被害が、ニュースが入る度に当初思われた以上に甚大であることが明らかになっています。最も新しい数字では、死者10万人に上るのではという推定すらありました。ミャンマー政府の発表によれば、少なくとも2万人以上が死亡、4万人以上が行方不明とありますから、10万人という数字はあながち過大というわけではなさそうです。

いずれにしましても、1970年11月に当時東パキスタン(現バングラデシュ)で起こったサイクロン被害(推定で死者30-50万人と言われています)、2004年12月に発生したスマトラ沖大地震とその直後の津波による被害(周辺諸国で約22万人が死亡)に次ぐ、記録的な自然災害であることに間違いありません。

しかし、今回の被害を単なる自然災害と呼ぶには、いささか疑問がないわけではありません。最大風速215km/h、中心気圧962ヘクトパスカルというサイクロンは、確かにかなり規模の大きいものですが、これよりスケールが大きなサイクロンやハリケーンが過去に無かったわけではありません。とは言うものの、冒頭の写真のようにベンガル湾を覆い尽くす程の巨大なサイクロンです。並大抵のものでないことは一目瞭然です。発生後、当初インド亜大陸東岸に向けて進んでいたナルギスは、ベンガル湾を迷走の後、進路を変えてミャンマー南部に矛先を変えました。気象データを十分に把握していたインド政府は、ミャンマー政府に対して、被害を極少に抑えるべく住民の避難誘導など適切な対策を取るように、かなり早くから警告していたそうです。ところが軍事政権は、住民に避難勧告を出すどころか、政府として何らかの行動を取った節がありません。

管理人の推測では、サイクロンの襲来を過小評価(あるいは楽観視)していたというよりは、対策を取るにも政府の中にその組織・体制すら出来ていなかったものと思われます。独裁的な軍事政権下では、一般に政権維持を至上命題とするシステム作りに汲々となるのが常で、しかも現政権が策定した新憲法案の賛否を問う国民投票の準備で手一杯だったようです。こうした中で自然災害が発生すると、とんでもない事態に至るのは何ら不思議ではありません。その意味で、これは完全に人災と言ってよいものと思われます。


ギリシャの作曲家テオドラキス(Mikis Theodorakis, 1925-) の「レクイエム」(1983-84年作)を、今回被害に遭われた無数の犠牲者の方々のために捧げたいと思います(Intuition Classics INT 3292 2)。このレクイエムは、無論キリストの死と復活への祈りを歌ったものですが、静謐な中にも地中海の陽光を浴びたような明るさもあり、死者のための鎮魂というよりは、悲しいことがあっても生き延びなければならない現世の人々のための音楽であるように思われます。今回幸いにも難を逃れた方々には、この被害の深い悲しみを乗り越え、力強く生きて頂きたい。管理人はそのように思います。

なお、テオドラキスの作品につきましては、以前本ブログの「自由と平和と鎮魂と」と題した記事(昨年10月1日)の中で、彼の「アダージョ」と「バレエ組曲『その男ゾルバ』」を取り上げました。再びこの未曾有の災害ニュースを耳にして、謹んで被害者の方々のご冥福を祈りつつ、真の平和と自由が彼の国に1日も早く訪れ、このような不幸が再び起こらないことを心からお祈りしたいと思います。

[管理人は、比較的最近ミャンマー出身のある方と一緒に仕事をしたものですから、特に気掛かりでなりません。日本人は(身近かに感ずるためか)震災に対してはすぐにシンパシーを抱くけれど、水害に対してはそうではないと言われます。災害であることに何ら変わりはありません。種々の団体が募金活動などを始めています。もし街で見かけましたら、ぜひご協力をお願い致します。]


Theodorakis2


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コメント
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死に行く人よりも、残された人たちの方がよっぽど悲しいでしょうね。何もかも失い、夢も希望も持てない中、生きて行かなければならない事くらい、辛く悲しい事はありません。
そんな中にあって僅かでも希望が持てるのならば、人は喜びをもって生きられるのかも知れませんん。
音楽がその希望を与えられる一つであることは確かです。世界中の希望をまだ持てない人々に、僅かでも温かな眼差しが届きます様に願って止みません。
2008/05/09 20:56  | URL | mimi #-[ 編集] |  ▲ top

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>mimiさん

新憲法案に対する国民投票が、一部の地域のみ24日に延期されたことを除いて、今日実施されたとのことです。現軍事政権は、被災地の救援より体制の維持確保の方が優先という判断なのでしょう。しかも、諸外国からの援助受け入れに関しては、専門家等、外国人の受け入れを拒否したまま、金銭と援助物資だけは許可するという基本方針を崩していません。益々救援対策の施行が遅れるものと予想され、感染症の蔓延などで、犠牲者は更に増加することが懸念されます。もし、そうした事態に至った場合には、軍政のリーダーたちは一体どのように責任を取るつもりなのでしょうか。

温かいメッセージをありがとうございました。本当に、被災された方々にはこの悲しみを力強く乗り越えて欲しいと思います。直接的な援助は直ちに届かなくても、せめて温かい眼差しを持って事態の推移を見守ることが大事だと思います。
2008/05/10 22:29  | URL | RAM #YuxmqlV2[ 編集] |  ▲ top


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