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新世界より(2)−天使と悪魔
- 2009/01/10(Sat) -
Maria1


年末に聞く除夜の鐘、そして年始の初詣。今年は初詣の人出が例年になく多かったのだそうです。皆様はどんな神社やお寺にいらっしゃいましたか?

鐘と言えば、日本ではお寺の鐘の音を思い浮かべますが、ヨーロッパではやはり教会の鐘です。その鐘の音が音楽に登場することは、当然クラシック音楽では極めてよくあることです。たとえば、その最も代表的な曲は「ラ・カンパネラ」でしょうか。

さてここで質問ですが、「ラ・カンパネラ」と聞いたら皆さんは誰のどの曲を真っ先に思い浮かばれますか?  意外と答えが分かれたりするように思います。



その人が現われることによって世の中や歴史が一変するという、文字通りエポック・メイキングな人物はいるものです。イタリアの町ジェノヴァ生まれの作曲家にして名演奏家を、そうした一人として挙げることに誰も異存はないでしょう。その人物は、自身のパート譜は無論のこと、オーケストラの楽譜ですら演奏会直前までメンバーに見せることもなく、また演奏後にはそれらをほとんど回収廃棄処分するという徹底した秘密主義を守りました。そしてそれまで誰も出来なかったような数々の超絶奏法の開拓。そうした名人芸を、彼の特異な風貌もあって、「悪魔」に魂を売り渡した代償として手に入れたのではとまで周囲の人たちに噂された傑物です。

では一体どんな音楽だったのでしょうか。ちょっと聴いてみましょう。


http://jp.youtube.com/watch?v=tBEP8f6cjGk


曲はもう皆さんよくご存知かと思いますので、紹介は省きます。これは第2番協奏曲の第3楽章。今日的に見れば、それ程驚きではないかも知れませんが、1800年代に入るか入らないかの時代にこうした演奏をされたら、聴衆がびっくりするのも無理はありません。そうした事情に加え、梅毒と(その治療のためと当時信じられていた)水銀中毒によってボロボロの身体になって亡くなりましたから、彼の遺体が直ぐには教会できちんと埋葬されなかったのも無理からぬ話です。ご覧のように後半から特殊奏法のオンパレで、この辺りはCDだけを聴いているだけでは中々曲の凄さが分かりません。


彼は生前ほとんど自作を出版しませんでした。ですから活発な演奏歴の割りには現在残されている曲は多くありません。そんな彼の代表作品を、彼自身が愛用していた楽器(ガルネリ)を復元修理して演奏された録音があります。ジェノヴァのレコード会社Dynamic社から数枚のCDとして発売されています。本日は、それらの付録として発売されたユニークなマルチメディアCD (Dynamic CDS 438) をご紹介することに致します。入っている曲は、ただ一つ「Adagio for Violin and Orchestra M.S. 49」。まるで天使の歌のように美しい調べの、演奏時間6分に満たないアダージョです。


なお、マルチメディアCDとは、音楽だけでなく、文章や写真情報がCD媒体の中に納められているもので、作曲者の生涯の他、彼の楽器やこの曲の演奏者たちについて様々な写真と共に詳しい解説がされています。そしてここで演奏されている曲は、上記第2番協奏曲の自筆譜が発見された際にまるで追加のように余白に手書きで書かれていたのだそうです。協奏曲の第2楽章(緩徐楽章)の代わりとして作曲されたのか、あるいは全く別の小ピースとして書かれたのか、その意図は全く不明とのことです。


Paganini1


[ジェノヴァは、もう一人歴史上有名な人物を輩出しています。]
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コメント
-今日、聴きました!-
すごいめぐり合わせです。今日、ラ・カンパネラをピアノで聴きました。
夫の実家は遠い香川県。きのう法事があり私も初参加しました。で、そのあとに「あんりを慰労したい」(←初老夫のゴマスリ発言)と、今日のコンサート・チケットを渡されたのです。

それなりにやさしい夫、51歳。私31歳。沢尻エリカと同じ年齢差ありま〜す。

井上道義指揮、オーケストラ・アンサンブル金沢の高松公演。
共演がアリス=紗良・オットという日独ハーフ。まだ20歳のピアニスト。ベートーヴェン「皇帝」を弾いたあと、アンコールに、ラ・カンパネラを弾いたのです。

バイエルで挫折した私には、死んでも無理な指の速さ ・・・ 
2009/01/11 21:56  | URL | あんり #qFzzuY2A[ 編集] |  ▲ top

--
ピアノで聴かれたということはリストの「ラ・カンパネラ」ですね。こちらは元々有名なところへ、フジコ・ヘミングウェイさんがTVで演奏されたことから、一躍脚光を浴びるようになりました。もっともこの鐘の音は、いわゆる教会のカラーン・コローンとは違ってずっと高い音色なので、何処の教会の音が元になったか興味があるのですが、まだ突き止めていません。

>年齢差

いいじゃないですか。しかも音楽好き、かつお優しそうなご主人で、言うこと無いじゃないですか。

>アンコール

「皇帝」の後に、この曲をアンコールとは、メインの管弦楽曲はさぞかし大曲だったのでしょう。充実のプレゼント、良かったですね。井上さんの演奏会には私もよく行きました。
2009/01/12 17:55  | URL | RAM #YuxmqlV2[ 編集] |  ▲ top

-帰りの新幹線で ・・・-
帰りの新幹線で、岩波の「アイルランド短編集」を読みました。数編ですけど。


これまでドイツにしか興味がなかった。


イギリスの詩で、ほんとうに好きで憶えているのも一篇しかない。しかも翻訳です。

  ああ、花のさかりに散りしひとよ
  君の眠るところに、壮麗なる石を置くなかれ。  
  ただ、その土に、薔薇こそ生いいでて
  春にさきがけて芽を吹きいで
  またあらき糸杉の、やさしき愁いに揺するぞよけれ。

私がこの世を去ったときは、このような詩を墓石に刻んでほしいと切に想う。戒名などは無くてよいから。
なんとなく思うことを書きました。ごめんなさい。
2009/01/12 23:16  | URL | あんり #qFzzuY2A[ 編集] |  ▲ top

--
>あんりさん

とても素敵な詩ですね。おぼろげではありますが、あんりさんが理想とする生き方が何となく伺える気が致します。ご紹介の訳詩だけでなく、コメント全体に詩情が漂っていると感じるのは私だけでしょうか。

ケルト特集を続けているつもりが、いつの間にやらそこから離れた記事を最近書いています。でも、また近いうちにアイルランド民謡に関連した音楽をいろいろ取り上げたいと思っています。お楽しみに。

ところで、今は「新世界より」シリーズ連載途中のつもり(笑)にも拘わらず、急に仕事が忙しくなり、しかもネット環境まですこぶる悪いところにおります。しばらくブログの更新が滞るかも知れませんが、そういう訳ですので、何卒ご理解くださいませ。
2009/01/15 01:50  | URL | RAM #YuxmqlV2[ 編集] |  ▲ top

-嬉しいです-
過分のお言葉をいただき、とても嬉しいのですが、お忙しい様子。お気遣いをなさらぬように。
私もパートで働くことになりました。炬燵ネコから脱却です。


舞踏の記事から思い出し、原田宿命(さだめ)さんの「ルネサンス舞踏紀行」を開きました。

ダ・ヴィンチの素描で有名なイザベッラ・デステについて、
「自ら詩を作り、チェンバロの演奏も巧みでそれに合わせて歌ったという。(中略)フランドル楽派のオックゲム作の歌を好んでよく歌い、その五線譜を私室の壁の、装飾羽目板に象嵌したほどだった」云々。
そこから、自由な空想を愉しみました。


アイルランド民謡につらなる音楽について書かれるわけですね。待っています!




2009/01/15 22:38  | URL | あんり #qFzzuY2A[ 編集] |  ▲ top

-永らくお待たせ-
またまたコメントを頂きながら、お返事が遅れまして申し訳ありませんでした。まだ忙しいことに変わりはないのですが、ちょっと息抜きも兼ねて更新しました。

>炬燵ネコから脱却

おお、それはそれは。この不況の時代、仕事を見つけるのは至難ですが、働ける限り働く方がいいと私も思いますよ。(家事も大事ですけれどね。)でもあんりさんの新しいお仕事、お相手がお相手だから大変そうですね。

ところで私のところ、炬燵がありません。炬燵に長く入っているほど部屋におりませんので...^_^;

それからダ・ヴィンチの名が出ましたので、ちょっと追加。丁度大航海の時代を考えていましたので、同じルネッサンスの偉人として「ダ・ヴィンチの音楽」というCDを聴きました。もちろん彼自身が残した楽譜はもはやこの世には残っておらず、その前後の音楽様式からおそらくこのような音楽を奏でていたであろうというものなのですが...。

本人の作品は残って無いものの、様々な文献からレオナルドが音楽家・演奏家としても超一級の音楽家であったことは確かなようです(特に当時一世を風靡していたビオラ・ダ・ガンバに似た6弦の弦楽器ビオラ・ダ・ブラッチョの名手だったらしい)。本当に多芸多才の大天才だったのですね。尊敬!
2009/02/02 21:21  | URL | RAM #YuxmqlV2[ 編集] |  ▲ top


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