一度踏み入ったら出口の全く見えない音楽の深い森。森の中を彷徨い歩く内に出会った神々と妖精たちのお話です。

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火炎樹
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ただ今の季節、管理人が滞在している国では火炎樹が花盛りの時期を迎えています。雨期に入って瑞々しい緑に目も鮮やかな赤い花が文字通り燃え盛るように咲いている様は、日本では決して見られない風景で、とても美しいです。この火炎樹 (flame tree)[別名鳳凰木(ホウオウボク)とも呼ばれる] は、マメ目ジャケツイバラ科に属する植物で、現在熱帯地域の多くの国々で見ることが出来ますが、元はアフリカ原産です。




芸術家と言えば、世事に疎いのが通り相場ということになっています。ところが、こと愛国心となると事情は違うようで、古今の作曲家を見る限り、体制派であるか反体制派であるかは別として、祖国のことを思う気持ちは皆人一倍強いように思われます。いわゆる「クラシック音楽」というものが、王宮や貴族など特権階級の人々から一般大衆のものへと変化した19世紀後半、世界のあちらこちらで各々の民族文化に根ざした「民族楽派」なる音楽が産み出されるようになりました。音楽の根源が人間の日常生活にあることを思えば、このことは極めて自然な流れだと思います。そして、そのようにして生まれた民族楽派の音楽は、特に大国の支配に虐げらて来た地域・民族であればあるほど、その地域の民衆に広く愛され支持されただけでなく、時として民族自決、さらには独立へ向けた歴史的変革の大きなエネルギー源とさえ成りました。


本日は、火炎樹のように燃え盛る情熱で祖国のことを憂えた音楽家、ポーランドのパデレフスキ (Ignacy Yan Paderewski, 1860-1941) をご紹介しましょう。パデレフスキはポーランド貴族の家庭に生まれ、幼少期より類い稀な音楽の才能を示し、やがて本格的に音楽の道に進むことを決意、ワルシャワ、ベルリン、ウィーンへと移り住んで音楽教育を受けつつ、活動しました。特にコンサート・ピアニストとしては、ヨーロッパ全土のみならずアメリカでも大人気を博しました。しかし、彼の特徴は、そうした音楽活動と同時に、ドイツやロシアに絶えず蹂躙される運命の祖国ポーランドが真の独立を勝ち得るためにと、様々な政治活動も精力的に行う熱血漢でもあったことです。詳しい経歴はネットで調べて頂くとして、第一次世界大戦終結後の1919年、ポーランド独立後の初代首相になったという事実だけで、如何に彼の存在が音楽家であると同時に、政治家としても民衆の間で支持されていたかがお分かりになるでしょう。音楽以外の分野でも名を残した作曲家は他にいますが、首相にまでなったのはパデレフスキだけです。


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知的かつ精悍な顔つきで、加えてリストばりの華麗なピアノ演奏の手さばきと来れば、人気が出ない筈はありません。しかし、ヴィルトゥオーゾ演奏家としては大成功のパデレフスキも、実は作曲の方ではそれ程有名にはなりませんでした。ポーランドの作曲家と言えば、一にも二にもショパン。世界的に見て彼の名前が記憶されているとは言い難いのが実情です。しかし、最近パデレフスキの作品が少しずつ録音され始めており、それらを聴くと、本当はなかなか捨て難い良質の作品を書いていたことが明らかになって来ました。おそらく彼の作品として第一番にお薦めしたいのは、ピアノ協奏曲イ単調 Op.17です。これはhyperionのRomantic Piano Concertoシリーズで堂々シリーズ最初のCDに選ばれており、しかもその第一曲目となっていますから、彼の作品の中では比較的認知されている部類に入ります。そこで本日ご紹介するのは、もう一つの大曲、彼の交響曲ロ短調「ポローニア(ポーランド)」です。


この曲、元々はパデレフスキが、ポーランド民衆がかつての支配国ロシア対して蜂起したことを記念するためにその40周年目に当たる1903年に着手されましたが、すぐには筆は進まず、結局数年後の1908年に完成しています。作曲動機が動機なだけに、当然のことながら祖国に対する熱い想いが全編に漂っています。もしも、もう少しだけ簡潔に要所を仕上げていたのなら、きっともっと人口に膾炙したことでありましょう。それにしても、近年に至るまで、この曲が民族楽派の音楽としてあまり認識されなかったのは不思議でなりません。昨今のYouTubeの充実度は驚くばかりで、この全曲演奏に75分も要する名品をカットなしで聴くことが出来ます。





なお、ここでアップロードされている演奏はheliosから出ているCD (↓) から取られたものだと思われます。


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