一度踏み入ったら出口の全く見えない音楽の深い森。森の中を彷徨い歩く内に出会った神々と妖精たちのお話です。

手話コーラス
SSS1


もう、早いもので5月も半ば。新しい職場に慣れることも然ることながら、それ以前に、先ずは新生活の準備をゼロから始めなければなりません。ようやく住む所だけは決まったものの、それまでがホテル住まい(キッチン付き)でしたから自分が用意するものは限られていたのに、これからは家具は勿論、生活に必要なありとあらゆるものを揃えなければなりません。そんなわけで、未だ未だセットアップに忙しく、しかも身体も本調子ではありませんが、あまり更新しないと此処に蜘蛛の巣が張ってしまいます。転居早々縁起でもないので、久々にちょっと書いてみましょうか。


さて前の仕事を終えてから、1年振りの健康診断を受けましたら、幾つかの項目で要注意の結果が出てしまいました。ハードな環境とハードなスケジュールの中で、過度の肉体的負担を強いながら無理をしていましたので、それ自体は驚くに当たりません。しかしながら、少々ショックだったのは前回の検査結果に比べて右耳だけが高周波数の音に対して若干難聴になっていたことです。丁度最近、スピーカー音の再生機能をチェックするCDを聞き流した時に、低周波数の音はよく聞こえたのに高周波数の音が聞こえず、スピーカーの性能低下かかなと思っていたのですが、自分の耳の問題もあったようです。もっとも、あくまで1万ヘルツ以上の音がよく聞こえないというだけで、日常生活には何の支障もありません。が、それでもちょっとショックです。技術の革新と共に社会全般が豊かになって、4Kのテレビとか、SACDだとか、益々高機能なものにオーディオヴィジュアルの世界の関心が動いていく一方です。でも、所詮人間の識別能力には限界があり、その違いが分からなかったなら意味はありません。聞き取れないような周波数まで性能を気にしても仕方がありません。余り高性能のCDに買い替えなくても十分に音楽が楽しめると思ったら、逆にほっと安心したようなところもあります。(←自分で自分を慰めていますので、読者の皆さんはお気になさらずに。。。)


それと、以前住んでいたお部屋はホテルとはいえ、かなり広い空間を独り占め。しかも、ちょっと一般の客室とは離れたところにあったため、音楽は聴き放題で、多少音量を上げても何の問題も無かったのです。が、これからは集合住宅に住むことになります。いわゆる(日本で言うところの)マンションの一部屋を借りましたので、(隣近所のことも考えると)そうそう大音量で音楽を聴くことは出来ません。相応の装置を持っていても小さなボリュームで聴くしかなく(ヘッドフォンをつけて聴くのは構わない)、折角のステレオセットが意味をなしません。そんなこんなで、音楽と聴力のことを必然的に考えざるを得なくなったというわけです。




聾唖の人たちと音楽の関係。ベートーヴェンの耳が不自由であったことは、皆さん、誰もがご存じですよね。20代にはその兆候が現れ始め、どんどん悪化して、30才になる頃には殆ど聞こえなくなっていたと言われています。耳が聞こえなくなった音楽家は他にもいます。晩年になってではありますが、スメタナもそうでした。彼の代表的作品である連作交響詩「わが祖国」や弦楽四重奏曲第1番や第2番などは、彼の耳が聞こえなくなってから作曲されたものです。(昨年大きな話題となったあの人なども、もしも真実であったなら歴史に残ったかも知れないのに、実に残念なことをしました。)


皆さんは、手話コーラスってご存じですか? 耳が聞こえない、あるいは難聴などのために、うまく声が出せない、あるいは発声すること自体ができない方々にも歌を唄う楽しさが味わえるようにと、大きな身振りと手話によってグループとなって合唱するのです。歌っている人たちが聴覚障害者であるか否かは問題ではなく、むしろ健常人の方たちが歌っていることの方が多いかも知れません。歌声を耳で聴くのではなく、視覚から得た身体の動作や手話から歌を感じ取るために、普通の意味での音楽鑑賞とは異なりますが、これが実際に体験すると新鮮な感覚で音楽と接することが出来るのです。そのサークルの輪が近年徐々に拡がっています。そして到頭、昨年の11月、聾者と聞こえる人がお互いを理解し共生する社会を築くため、全国で初めての手話言語条例を制定した鳥取県が、それを記念して「第1回全国手話パーフォーマンス甲子園」という大会を米子市で開催しました。野球の甲子園だけでなく、今はいろいろなパーフォーマンスの高校生を対象とした全国大会があるのですね。マンガで有名になった書道のそれは知っていましたが、手話にもあるとは知りませんでした。


百聞は一見に過ぎず。ちょっと「手話パーフォーマンス甲子園」の大会の様子をご紹介してみましょう。第1回で栄えある優勝の栄冠に輝いた石川県田鶴浜高等学校の皆さんによるパーフォーマンスです。著作権の関係で使用された音楽は消去されていますが、それこそが耳の聞こえない人たちの世界です。けれども音は無くても十分に音楽の美しさ、楽しさ、素晴らしさが伝わって来ます。偶にはこのような音楽体験は如何でしょうか。是非他の学校の皆さんによるパーフォーマンスもご覧になってみて下さい。




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