一度踏み入ったら出口の全く見えない音楽の深い森。森の中を彷徨い歩く内に出会った神々と妖精たちのお話です。

今年は女性が・・・
KAP2
マリー=ガブリエル・カぺ作 『自画像』


昨年末から年を跨いで幾つかの美術館や展覧会などに足を運びました。休日の過ごし方としては極めて贅沢な時間の使い方かも知れません。その中で特に印象に残ったものをこれから順次ご紹介したいと存じます。


冒頭に掲げたある婦人の肖像、先ずは「自画像」というタイトルにビックリ!


作者は女性? 


そうなんです。18世紀後半から19世紀初頭にかけてフランスで活躍した女性画家マリー=ガブリエル・カぺ(Marie-Gabrielle Capet, 1761-1818)が22才の頃に画き上げた作品(国立西洋美術館所蔵)です。モーツァルトやベートーヴェンが生きていた時代と重なっていることを思えば、彼女の独自性・異才性がよく分かるかと思います。彼女はリヨンの貧しい使用人の娘として生まれましたが、1781年、20才になった時、これも同じく女流画家であるアデライード・ラビーユ=ギアール(Adélaïde Labille-Guiard, 1749- 1803)がパリに開いた「女性のための美術学校」で学ぶためにパリに出ることを決意。その2年後に画いた作品がこれです。チョークホルダーを右手に持ち、自信に満ちたほほ笑みを浮かべたカぺの姿は、そのふくよかな肉体や豊かなブロンドの髪は無論のこと、それらを包み込む如何にも肌触りが良さそうな衣装とそれに統一された淡い青色のリボンの質感と合わせて、この画を見るものの眼を奪います。おそらくカぺ自身が相当な美人だったのでしょう。天は二物を与えることがあるのですね。


ちなみに彼女の師匠ラビーユ=ギアールも、特に肖像画を得意としており、その描写力が尋常ではありませんでした。そしてラビーユ=ギアールの画いた「自画像」から判断するに彼女も相当な美人であったという共通性もあります。彼女らが活躍した時代は、1787年、ブルボン王朝に反対する貴族らの反抗に始まるフランス革命の直前に当たり、事実ラビーユ=ギアールらは革命を擁護する立場を取り、いわば女性が社会的自立をする先駆けとなった人物とも言えます。ラビーユ=ギアールは、もう一人の女流画家エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン(Marie Élisabeth-Louise Vigée Le Brun, 1755- 1842)と共に女性で最初のアカデミー会員となっており、フランス革命を経て女性にも広く開放されたサロンを大いに発展させました。カぺは弟子としてその先輩達の系譜を引き継ぎ、フランスのサロンで活躍した中心的人物の一人と言っても良いでしょう。


そう言えば、東京都知事の小池さんが次の都議選に立候補する人材探しのための選考試験を行ったというニュースが流れました。この方も昨年から一気に注目度を挙げた女性の一人ですね。2017年は女性が一段と輝く年になる予感が致します。





作曲家で女流と言えば、現代では多数の著名な作曲者が居ますが、やや時代を遡るとこれが案外男性優位の社会です。例えばシューマン(Robert Alexander Schumann, 1810- 1856年)の妻となったクララ・ヨゼフィーネ・シューマン(Clara Josephine Wieck-Schumann, 1819- 1896)はピアノの演奏家として、また作曲家として19世紀半ばにおいて超有名人の女性でしたが、夫ロベルトとは結婚して暫くは理想的なカップルとして共に活躍するも、同業の悲しさか、演奏家としてのクララに注目が集まる一方、ロベルトは彼女の付け足しのような周囲の扱いに苦しみもがき、結果としては彼が死ぬまで苦しむことになる精神疾患の引き金にもなってしまいました。うーん、女性が活躍するのは良いのですが、なかなか家庭との両立は難しい!


その解決策について論じていると、いつまでもこの記事は終わりませんので、今日は取り敢えずクララの作品を聴いてみましょうか。クララ・ヨゼフィーネ・シューマンのピアノ協奏曲イ短調Op.7。クララが13才の時に着手され、後に夫となるロベルトの助力によりオーケストレーションなどがなされ、約10年余りをかけて1834年頃に完成しました。十分鑑賞に堪える傑作だと思います。





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