一度踏み入ったら出口の全く見えない音楽の深い森。森の中を彷徨い歩く内に出会った神々と妖精たちのお話です。

アイルランドの風景(3)
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Kylemore Abbeyから更に北に向かうと、アイルランドに現在只一つ残る、かつて氷河が削った痕跡であるフィヨルド湾を見ることが出来ます。上の写真は湾の出口方向(西)を撮影したもの。


反対側(東)を撮影すると、まるでスコットランドやスカンジナビアの趣に変わります。


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そして、この写真にも写っていますが、アイルランドでは本当に全島至るところで羊を多数見ました。特にこの地方の周辺では白黒のツートン・カラーが特徴であるキラー・シープが居ます。大自然の景色の中にぽつねんと草を食む様子は、なかなか絵になっていると思われませんか。


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フィヨルドから東に向かってゴールウェイに戻るようにして少しドライブすると、Mayo郡にCongという名前の小さな町があります。


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アイルランドでは本来の母国語であるゲール語(アイルランド語)の復興に力を入れており、各地の道路標識は上段にゲール語、下段に英語で書かれています。2つの言語は多少似ていることもありますが、結構異なっており、現地語で話されると全く何を言っているのか分かりません。言葉はさておき、何より周囲の静かで美しい風景に心が癒されます。


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静かな川のほとりにこんな井戸があって、「Make a Wish」とありました。何でこんなところに?と不思議に思われた方もいらっしゃることでしょう。実はこの町、あることで大変有名なのです。さて、ここで読者の皆様にクイズです。この町が有名なのは一体どんな理由があってなのでしょう?次の写真をヒントにお答え下さい。


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直ぐに答えられた方は、相当古くからの映画ファンに違いありません。


アイルランドを舞台にした名画はたくさんありますが、古典的に最も有名な作品は「わが谷は緑なりき」。本ブログでも随分以前に取り上げたことがあります(2007年6月13日の記事)。


ジョン・フォード監督が自身アイルランド移民の末裔であることを意識して、上作から11年後の1952年に制作したアメリカ映画「The Quiet Man (邦題「静かなる男」)をこの町で撮影したのです。映画のストーリーの詳細は他に譲るとして、かいつまんで言えば、アメリカ人のショーン青年(主演ジョン・ウェイン)が米国での生活に疲れ、生まれ故郷であり、幼少期を過ごしたアイルランドの小さな村に戻ることを決めます。そして暮らし始めて間もなく、村娘メアリー・ケイト(モーリン・オハラ)と恋仲になるのですが、ケイトの兄レッド・ウィルは突然他所から闖入して来たショーンが気に入りません。


そうこうする内に、ウィルはショーンに決闘を申し込むのですが、かつてアメリカに住んでいた時にボクシングの試合で相手の命を殺めてしまったショーンは、そのことを黙して語らず決闘の申し込みから逃げ続けようとします。周りから臆病者と蔑まれ、ケイトにまでも愛想を尽かされるショーン。そして結末は如何に・・・。


アメリカは移民の国。2つの世界大戦を経て得た繁栄と平和を迎えた米国民(白人)の多くは、このような自らのルーツを意識した作品に、様々な苦労を振り返りながら慰めを求めたのだと思います。映画制作から早や半世紀以上が経過しているにも拘わらず、この町を訪れる人々が絶えることはありません。


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町の中心部にあるカフェ、その名も「The Quiet Man Cafe」。ここでは、ちょっとしたお土産などを購入することも出来ます。この他、町の諸所が映画のロケに使われました。少し町外れには廃墟となった古い修道院の跡も。敷地の中にはケルト十字の墓標がたくさん立っていましたが、あくまでお墓なのでここでの掲載は止めておきましょう。修道院前の草原には、時の経過を忘れさせてしまうように静かなアイルランドの風がそよいでおりました。


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さて、本日の音楽は「The Quiet Man」のメイン・テーマ曲「The Isle of Innisfree」(アイルランドのソングライター Dick Farrelly が1950年に発表) 。世界的大ヒットとなった懐かしのBing Crosbyによる歌声と現代のRebecca Winckworthによるハープ演奏を奏でながらの美しい歌唱をそれぞれお届け致しましょう。フォード監督は、このメロディーと歌詞を聴いて大変気に入り、映画の主題歌に決めたそうです。「Make a Wish」の意味もお分かりになるかと。








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