一度踏み入ったら出口の全く見えない音楽の深い森。森の中を彷徨い歩く内に出会った神々と妖精たちのお話です。

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ある時計職人の音楽
JHC2


自分で言うのもなんですが、当ブログ管理人はものを大事に使います。お気に入りを長く大事に使用することは決して悪いことではないと思うのですが、その結果身の回りのものが増える一方となり、いつも保管する場所探しに苦労しています。CDなどはその最たるもので、お気に入りであれば、それこそ摩耗(?)するくらいに何度となく再生しますし、一度か二度聴いてあまり面白く感じられず、もはや再生することはないかも知れないというものであっても、なかなか処分することが出来ません。


そんな管理人が長らく使っていた愛用の腕時計(自分用としては生まれてから2台目)が昨年に到頭故障してしまいました。買った初めの頃こそボタン電池が切れたら時計屋さんに交換をお願いしていましたが、やがて自分で裏蓋を開け交換することを覚え、それを何度も繰り返しました。行く先々で時差合わせをしたためか、あちらこちらが弱っていたのでしょう。ある日のこと、時差調整のために針の調節ねじを少し強く引っ張ったら、ポロッと抜けてしまい、どうにも元に戻らなくなったのです。


というわけで、久々に新しく腕時計を購入。これが管理人の身の回りで最近起こったニュースと言えばニュースです。実に地味でしょ。。。


それにしても、今時の腕時計。上には上があるのでしょうけれど、相当な機能が備わっているにも拘わらず、結構お安いのですね。前に使っていたものよりも正確、しかもデザインが素敵で軽量なのに、お値段は半分以下ではなかったでしょうか。技術の進歩? それとも大量生産が可能となったから? いずれにせよ、出費が少なくて大いに助かりました。





話は変わって、皆様の初夢は如何でしたか? 枕元で見た夢も大事ですが、現実生活の上で持っている夢。それがもっと大事です。


そこで本年最初の音楽は、久し振りに吹奏楽の分野から選択してみました。スコットランド出身の作曲家ピーター・グレーアム (Peter Graham, 1958-) の作品「ハリソンの夢 Harrison's Dream」。 吹奏楽の超難曲の一つとして知られ、コンクールの自由曲として国内外の数多くの団体が果敢にも挑戦、演奏しています。ここでは本場英国の団体の演奏を紹介しておきましょう。


ところで、何故に「ハリソンの夢」かって申しますと、本曲は18世紀のイギリスの著名な時計職人 John Harrison (1693-1776) をテーマにして作られた音楽であることが案外知られていないからなのです。Harrison氏は木工職人の父親の元に生まれ、父の仕事を手伝いながら20才になった時に木工で製作した時計が評判となり、やがて時計製作者として一目置かれる存在となります。バイメタルの発案者であり、また15世紀末以来急速に発展した大航海時代を経て、長い航海にあっても正確で、かつ経度を正確に測定できる時計型クロノメーターの発明者と言えば、彼の才能が並外れていたことが分かるでしょう。


その彼が、生涯に亘って追い求めた夢。それは、今までに見たこともない、より正確な時計作りでした。1760年にジャマイカ島への航海に携帯型の時計で試験したところ、61日間にたった45秒の遅れという優れた性能を示しました。一旦はイギリス政府から20,000ポンドの懸賞金を約束されたにも拘わらず、彼が庶民の出身であったこともあり、時の有名天文学者らや議会からも測定方法などについて難癖が付けられ、追加試験を要求された上、挙句の果てはごく一部しか報奨金が支払われませんでした。こうした逆風にも耐え、1764年に製作した時計を用いてバルバドス諸島への5ヶ月間の航海で調べた結果は、誤差が何と15秒だったそうです。また1773年に行われた実験によると、1日当たりの誤差が1/14秒しかなかったとのこと。その時代の技術レベルを考慮しても、これは驚異的な数値です。こうした結果を踏まえ、最終的にはJohn Harrison氏の時計の正確性を議会も正式に認め、懸賞金の残額が全て支払われることになりました。そんな彼の名前を曲名に付けた本作品。Peter Graham氏の強い想いが秘められていることを、是非感じ取って頂ければと思います。

[注. 現在、彼の名前が冠されている時計メーカーがありますが、同社とHarrison氏には直接の関係はありません。Harrison氏の名声を借りて社名を付けたものと思われます。詳しくは別途お調べ下さい。]







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