
日本の入国管理に際して指紋まで取るとは人権侵害の屈辱ものだと、つい近年まで鋭い抗議をしていたその国が、いつの間にやら外国人の入国者に対して、「左人指し指をそこに置きなさい」「次は右指」「今度はこっちのカメラに顔を向けなさい」とやるようになりました。金属探知機を通過する時には、ジャケットはもちろん、靴まで脱がなければなりません。すべては、あの9.11から始まりました。
何でもNo.1でなければ気がすまないアメリカ。他の国からどんなに悪口を言われようが、陰口をたたかれようが、平気の平左の超大国。世界の平和は、自分たちの奮闘努力によって維持されているという自信に満ち溢れています。欲しいものを何でも手に入れることができるお金も持っています。
そんな鼻持ちならない国ですが、いざ住めば、世界の苦悩など何処吹く風。現実に、圧倒的スケールの大自然、巨大な建造物、発達した道路網、あふれる商品などを目にすると、その自信に漲るスタンスが決して虚栄に基づいている訳ではないことを納得させられてしまいます。
管理人は、少し前からこの国のキャピトル、ワシントンDCに来ています。入国時の面倒さには辟易しますが、こちらに来ると何故かホッとするのは、かつて住み慣れた国だから言葉に苦労しないで済むからかも知れません。しかし改めて、あらゆる事物の規模の大きさにびっくりさせられます。建物自体も巨大ですが、同じ組織の建物から建物へ移動する際にも頻繁に行き来するシャトルバスを使うという広大さ。テレビをつければ、100チャンネルのほとんどで別な番組を視聴することが出来ます。新大陸の発見とそれに続く本格的な開拓入植開始から、わずか300年程度しか経っていないにも拘わらずこの発展振りですから、恐れ入るしかありません。
これから数回、アメリカに関わる話題と音楽について語ってみたいと思います。日中は毎日仕事に追われていますが、夜には多少のフリータイムがあります。コンサートの報告を交えるかも知れません。
という訳で、先ずはその前に音楽でざっと観光旅行を致しましょうか。それには皆さんご存知の作曲家グローフェ(Ferde Grofe, 1892-1972)の作品がうってつけです。最も有名なのは、「グランド・キャニオン組曲」。これは学校の音楽の時間などで聞かされた方も多いことでしょう。そのグローフェ、如何にも生粋のアメリカ人と思われ勝ちですが、実はグローフェの本名は、Ferdinando Rudolf von Grofe、つまりドイツ系移民の家系なんですね。ニューヨークで生まれて間もなく、一家はロサンゼルスへ転居。家族は皆音楽関係に進んでいますが、ご本人は意外に大変な苦労人で、14才の頃より家を出て単身実に様々な仕事をこなしながら生計を立てています。
彼の音楽は、オーケストレーションの妙味が抜群です。「デス・バレー組曲」、「ハドソン川組曲」、「ミシシッピ組曲」、「ハリウッド組曲」、そして「グランド・キャニオン組曲」。タイトルを見ただけで全米各地を回った感じがすることでしょう。本日は、中でもこれぞアメリカと言える作品「ナイアガラの滝組曲」を聴くことで、観光名所巡りを完結してみたいと思います。豪快な滝の描写に息を呑まれるであろうことは必定、第3曲にはわざわざ‘Honeymooners’のサブタイトルまで付けてあり、正に至れり尽くせりパック旅行の出来上がりです。折角ですからSACDでどうぞ。あ、こういう曲を聴く時には、芸術性云々なんていうお堅い話は抜きね。